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「OPT」の第一弾商品、吸水型ボクサーパンツを開発。Rebolt inc下山田志帆が目指す、誰もがわがままであれる社会とは

HEROs

<トップ写真:©︎スフィーダ世田谷FC>


なでしこリーグ2部「スフィーダ世田谷」に所属する現役女子サッカー選手兼、株式会社Rebolt(レボルト)共同代表者の下山田志帆さん。2019年に自身が性的マイノリティ(LGBTQ)であることを公表して以降、「アスリートとジェンダー」「スポーツとLGBTQ」などをテーマに発信を続けてきました。

元女子サッカー選手の内山穂南さんと共に創業した、社会課題を解決することを目指すRebolt の第一弾の活動となったのが、第一弾商品として吸水型ボクサーパンツを販売するノーノーマルブランド「OPT」の立ち上げです。

「誰かにとっての選択肢を増やす」プロダクト開発に至った経緯や、アスリートだからこそぶつかったビジネスの壁など、社会課題解決のための活動を続ける下山田さんの想いを伺いました。


「OPT」が受け入れられたのは、シンプルに“かっこいい”から

「OPT」という吸収型ボクサーパンツを開発した理由は、立ち上げメンバーである私と内山が“生理中もかっこいいパンツが履きたかったから”という一言に尽きます。

日本に「生理時に履くことのできる吸収型パンツ」が登場したのは、2019年のこと。ナプキンやタンポンを使用しなくて済む=機能的不便さを解消する救世主のような製品の登場に、ものすごく衝撃を受けたのを覚えています。


ただ、基本的に吸収型パンツは、デザインが明らかに「女性向け」の者が多いですよね。それが、「女性はこうあるべき」と言われているみたいで、すごく違和感がありました。私は自認する性が女性ではないからこそ、生理の時は自分が女性であることを強く自覚させられるんです。そこでさらに「女性らしさ」に溢れたパンツを履くことで、普段できている自己表現すらしにくくなるような気分になっていました。

ただでさえベストコンディションでいることが難しい生理中に、テンションの上がる吸水パンツがほしい!ないなら、作りたい!でも、メンズボクサーパンツ型の製品に需要はあるのか?誰が必要としているのか?私たちも根拠が示せないなか、私たちの提案にはどのブランドも企業も及び腰でした。「それなら、自分たちだけで作ればいいじゃん」と、走り出したのが「OPT」開発のきっかけです。

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<写真:本人提供>


目標額の6倍の支援達成。「らしさ」の枠を抜け見えた「OPT」のニーズ

「OPT」販売に向けたクラウドファンディングでは、目標額の6倍もの支援をいただきました。つい最近気付かされたことですが、「OPT」は結果的にLGBTQというワードをクラファンページ内にひとつも使っていないんです。LGBTQ当事者であり女性アスリートでもある私たちが「なぜ欲しいと思ったのか」を伝え続けた一方で、「LGBTQ当事者向け」「アスリート向け」と属性を括ることは絶対にしなかった。結果として、支援者が各々のニーズを見つけて選んでくれた商品となりました。皆さんがそれぞれのニーズに合わせて選んでくれた商品でした。

「初潮を迎える子が、“OPTだったら履いてもいいよ”と言ってくれたので買いました」と、手に取ってくださった方がいました。「尿もれが気になる」という男性にもご購入いただいたことにも驚きました。

あえてターゲットを特定しなかった「OPT」が世代や性別を問わず受け入れてもらえたのは、「かっこよさ」を追求したからこそ。隠れたニーズがデザインによって可視化されたことで、LGBTQの人たち以外にも、“かっこいい吸水ショーツがほしい人”がいたということがわかりました。

これまで、男らしい・女らしいという概念に縛られることが苦しくてたまらなかったし、たとえ生理中だとしても「かっこよく」という自己表現を諦めたくなかった。それを純粋に追い求めて走ってこられたことは、私たちの強みにもなりました。


「君たち、楽しそうだね」ビジネス初心者でも仲間ができた理由

「OPT」商品化への道のりは、決して楽なものではありませんでした。というのも、私も内山も女子サッカー選手として競技一筋の人生を送ってきたので、ビジネスの知識はゼロだし、戦略も皆無。社会人経験やビジネス感覚が圧倒的に不足していたことで、契約関係の交渉では特に苦労しました。

ある企業の方とお話をしたとき「作りたいのはわかったけど、そのあとのイメージが何もない」と言われたことがあります。私たちはそれまで、パッションだけでコミュニケーションを取ろうとしていましたが、物事を進めていくにつれ、“ビジョンだけでは飯を食えない”ということに気づかされました。

でも、「先の目標や戦略はゼロでも、一緒にやったら面白そうだよね」という評価もしてくれて。会話をしていくうちに未来が見えて、一緒にゴールを探していく感覚で進められています。仲間集めは、苦労もありますがとても楽しいです。


私たちは「LGBTQ当事者」ではあるけれども、「LGBTQ当事者のため」だけにOPTを作ったわけではありません。むしろ、私たちの視点から作られた商品は、全ての人たちのためにになると心から信じているポジティブなパワーが原動力です。

だから、ひたすらに自分たちが欲しいもの、履けば気分が上がる「かっこよさ」にこだわってきました。ポジティブなエネルギーが伝わりやすかったことも、一緒にやりたいという気持ちを感じてもらいやすかったのではないかと思います。

“当事者だから”はセールスポイントではなくて、ただ「かっこいい」にこだわってモノを作ったら、いろんな共感が生まれた。その結果、BtoCだけじゃなくてBtoB、ビジネス的にもその価値観を認めてもらうことができたんだと思います。

全員、わがままであれ。下山田志帆が人生を賭けて叶えたいこと

女子サッカー界には、「メンズ」という言葉があります。幸運なことに私たちは、女子サッカー界においては自分がマイノリティであると感じることなく、10年以上サッカーを続けてくることができました。

この環境のすごいところは、「メンズ」じゃない人たちにあると思っているのですが、彼女たちは「メンズ」という存在を特別視しません。もはやその人の性的なアイデンティティが、ピッチの上では関係ないということを理解しているからこそ、その人がどんな自己表現をしても「なんだっていいよ」と気にも留めないんです。

それはReboltで掲げている、ミッションの「WAGAMAMA(わがまま)であれ」にもつながっています。今まで私は、“男はこうあるべき・女はこうあるべき”というステレオタイプの不合理な物事を許せず生きてきました。強い意見を主張することで厄介者、と思われてきた人生だったと思います。


私が今、人生を賭けて取り組みたい・変えていきたいと思っているのは、「世の中すべての人がわがままになれる社会」を作ること。女子サッカー界をはじめ、ドイツでプロ選手として過ごした2年間、私のわがままを肯定してくれた人たちのおかげで、心から居心地が良いと思える場所を知れました。だから、今度はReboltがわがままを肯定する立場でありたい。すべての人がWAGAMAMAを肯定される世界では、お互いの自己表現を尊重できるはず、OPTはそのきっかけの一つになると思っています。

※本取組はアスリートの社会貢献活動を表彰する『HEROs AWARD』の2021年度、女性部門で最終候補としてノミネートされました。
受賞した取り組みはこちら↓
https://sportsmanship-heros.jp/award/




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