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ウルフ・アロンが語る、「アスリートの言葉のチカラ」

HEROs

アスリートの社会貢献活動を推進するプロジェクト「HEROs」では、社会貢献活動に高い関心と意欲をもったアスリート同士が連携するために『HEROsメンバー』というコミュニティを設けています。

HEROsメンバーはHEROsの取り組みや日本財団のさまざまな事業と連携し、アスリートによる社会貢献活動を推進していく予定です。今回は、『HEROsメンバー』であり東京オリンピック柔道男子100キロ級 金メダリストのウルフ・アロンさんに、現役アスリートに伝えたい「言語化力」の大切さと影響力の生かし方について語っていただきました。

インタビュー:阿保幸菜(REAL SPORTS)

第一線で活躍する“現役”アスリートが伝えることが大切

私が積極的にメディアや講演会に出演している背景には、柔道への危機感もあるんです。競技人口は年々減っているのが現状であり、まずは興味を持ってもらうきっかけを作る必要があると考えています。そのためには、アスリート自らさまざまな活動や発信を行なっていくことが大事だと考えるようになりました。

どれだけ選手が頑張っていても、競技人口が少なければそのスポーツの価値はどうしても下がってしまいます。「たくさんの人に、柔道をもっと知ってほしい」という気持ちが強くなっていったんです。

学校の授業などでケガや事故が増えていることも、競技人口低下の理由のひとつなのではないかと感じています。でも、正しい方法で行なえば、ケガをすることは少ないです。

どんなスポーツでも、正しい力の使い方をしなければ危険をともないます。最前線で活躍する選手として、競技のマイナス面から目を背けず、向き合っていくことこそ大切だと思っています。

そんなことを考えている中、今回HEROsメンバーとして活動を始めることになりました。お声がけいただき「ぜひやりたい」とお返事しました。社会に向けた活動をしていくなら、より注目してもらいやすい現役中に始めることが大事だと感じました。

HEROsアンバサダーとして活動する井上(康生)先生にも、影響を受けた部分があります。様々な社会貢献活動に取り組んでいて、柔道家としてだけでなく人間としても一流の方だな、と。

東京オリンピックで勝つことで「メディア露出を増やして柔道を広めたい」という思いはもともと持っていました。実際に優勝して知名度はかなり上がりましたし、オリンピック前とは比べ物にならないほど影響力が強まったと感じています。この影響力がある現役中に、活動を始めていきたいと思いました。僕を通じて、少しでも柔道を身近に感じていただけたら嬉しいです。

伝えるために、言語力は欠かせない

HEROsメンバーとして初めての活動では、「HEROs DREAM」の企画として柔道レッスンを行ないました。参加者それぞれ年齢や柔道経験も幅広く、一人ひとりへ応じた話し方をするように意識していました。

これまでの講演会や柔道教室、メディア出演などの活動を通して、相手に合った伝え方をすることや、臨機応変に対応できる能力が必要だと感じるようになりました。相手の立場や年齢、状況を意識して話さなければ、伝わらない部分も多いです。例えば高齢者の方々の前で「夢を持つ重要性」について話しても、響きません。

僕が柔道をする時、「相手はどういうことをされたら嫌なのか」を考えながら戦っています。相手をよく見る力は、競技を通して培われてきた気がします。特に柔道の場合は競技中の距離が近いので、相手の顔色やちょっとした反応を察する能力が身につきました。会話の中でも同じように、相手の仕草や顔色の中から「相手が何を求めているのか」を見極めるようにしています。

柔道の知識が10あったとしても、伝える能力が3しかなければ結局3しか伝えることができません。柔道の魅力を正しく伝えていくために、どの言葉を使うかはとても大事だと思っています。

特に柔道は、オリンピックを通じて初めて観る方も多いです。観るきっかけがあっても、初心者でもわかりやすいように伝えなければその先で興味を持ってもらえません。実況中継がわかりやすいと、初めてでも楽しんでいただけますよね。引退して実況を担当する選手も多いと思います。自分の競技について的確に言葉で表現できる力は、選手のうちから身につけておくべきだと感じます。

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僕が話すことに慣れているのは、幼い頃の環境が大きく影響しているのだと思います。子どもの頃から「よく話す子だ」と母親に言われていました(笑)。親から「中学校を卒業するまではしっかり勉強しなさい」と言われていて、基本的な知識や一般常識を身につけられる家庭環境で育ちました。

周りの柔道選手を見ていると、敬語をきちんと使えていない選手がいると感じます。基本的な教養や常識を身につけておかないと、引退後にとても苦労します。競技に時間を割くことも大事ですが、小学校〜中学校のうちは勉強を疎かにしないことが重要だと思います。

幼い頃から道場へ通っていて、たくさんの人と触れ合える環境にいたことも大きいと思います。学校でのコミュニティに限らず、柔道の先生や道場にいる大人たちと話す機会が多くありました。

また柔道は個人競技ですし、試合でかなりの緊張感があるんです。子どもの頃からこの緊張感を経験してきたので、大きな舞台でもあまりあがらずに話すことができますね。

影響力を持って発信できるのが、アスリートの強みです。試合で結果を残すほど話を聞いてくれる人が増え、言葉に価値が生まれるもの。間違ったことは言えない、と強く感じています。特に子どもたちは僕たちの言葉を素直に受け取ってくれるので、正しく伝えることを忘れてはいけません。

“アスリートに求められている活動”を追求していきたい

今後は、まずは現役柔道選手として勝つことを第一に考えながら、それ以外の時間の中で積極的に活動していきたいと考えています。先ほども述べましたが、結果があるからこそ言葉に重みが出るので、勝つことは今後も徹底していきたいです。

押しつけになるような活動はやりたくないです。自己満足ではなく、「こういう活動をしてもらえてよかった」と思っていただけるような活動を模索していきたいです。どういった活動をして欲しいのかアンケートをとってみるのも、面白そうですね。

 スポーツも、押し付けがましいものであって欲しくないですね。特に東京オリンピックはコロナ禍で、「スポーツの力で元気に」といった要素も強かったと感じます。でも、本当に苦しんでいる人たちがいる中で、綺麗事を言っているように聞こえてしまうこともあって。自分たちが元気を与えるというより、観ていただいた方に感じ取っていただくものだと思っています。試合でベストな姿をお見せできるように準備して、辛い中でも少しスポーツを観て、楽しんでいただければという思いで過ごしていました。

影響力を持っているアスリートこそが、誰よりも競技の価値を上げていけると思います。

そのための意識や活動が、回り回って引退後のキャリアにも活きてくるのではないかと。引退後に「テレビに出たいです」「講演会をしたいです」と言っても、もう遅い可能性があるんです。現役中に競技外の活動に取り組むことで知名度が上がり、応援してくれる人が増えます。そうすれば引退後の活動もスムーズにできるのではないかと思います。

日頃から、「自分がやっていることを的確に説明する」ことを意識してみてください。そうすると、自然と言語化する力もついてくるはずです。メディア出演や教室などさまざまな場で、自分自身や競技の魅力をしっかり表現できるようになっていくと思います。

社会貢献活動に対しては、「偽善」「自己満足」といった声ももちろんあると思います。ですがそういった外野からの声は気にせず、求められていることをしっかりと把握して取り組んでいきたいです。現役選手だから伝えられること、アスリートとして求められていることが何かを考えながら、今後も活動していきたいと思っています。

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